1.収賄者の法的責任
「不正競争防止法」は、1993年に公布され、2017年および2019年に改正され、今回は3回目の改正となります。1993年版では、商業賄賂の収賄者を「取引相手またはその従業員」と規定したが、2017年版と2019年版では、「取引相手」を除外し、「取引相手の従業員」と規定しました。
今回の改正にあたり、2022年の意見募集稿では、再び「取引相手」を収賄者と規定したことから、時代の流れに逆行して事業者間の合理的な活動に悪影響を及ぼすと懸念されいたが、結果的に2017年版と2019年版の形を維持することになりました(第8条第1項第1号)。
2019年版までは、収賄者の法的責任がなかったので、改正法第8条第2項は、後述内容の布石として、事業者および個人が収賄してはならないと規定しました。
改正法は、事業者が贈賄または収賄した場合、違法所得の没収、10万元以上100万元以下の過料に処すると規定しました。また、情状が深刻な場合、100万元以上500万元以下の過料に処し、且つ営業ライセンスの取り消しもできると規定しました(第24条第1項)。
事業者の法定代表者、主要責任者、直接責任者について、贈賄に個人責任を負う場合、また、個人が収賄した場合、違法所得の没収、100万元以下の過料に処すると規定しました(第24条第2項)。
以上で分かるように、収賄者の法的責任が明確化され、また、事業者による商業賄賂の過料上限も500万元へ引き上げられました。
2.責任者の個人責任
従業員が贈賄した場合、事業者の法定代表者等個人に対し、過料を科す前提条件として「個人責任を負う場合」が挙げられているが、どう理解すれば良いでしょうか。
7月8日付けの「中国市場監管報デジタル版」に掲載された署名文書[1]には、以下の内容が書かれています。
「贈賄が発生した場合、一概に法定代表者等個人の責任を追求するのが合理的ではない」とした上、「法定代表者等は、商業賄賂行為について、主観は知っているまたは知るべく状態で、且つ客観的に決定、招集、計画、批准、示唆、容認、指示等行為を行った場合、個人責任を負うと認定できる」、また、「社内の申請記録は、業務フローや慣例等客観的事実を踏まえ、商業賄賂嫌疑のある行為について個人のポジションや役割等を個別案件ごとに分析しなければならない」と見解を述べました。
「中国市場監管報」は、国家市場監督管理総局の管轄下の新聞なので、この見解が行政側に認められていると理解した方が妥当ではないでしょうか。
3.実務対策
改正法の施行は10月15日となるが、今後、改正法に基づく法執行が活発になると予想されます。実務対策として、商業賄賂防止制度の制定、社員研修の実施、社内通報窓口の設置、従業員およびサプライヤーに誓約書を提出させる等措置を含むコンプライアンス体制の構築が重要であると考えます。
[1] 「改正不正競争防止法の重点解読およびコンプライアンス提示(上編)」(上海邦信陽律師事務所、張士海 楊涛)
http://pc.cmrnn.com.cn/shtml/zggsb/20250708/128559.html
http://pc.cmrnn.com.cn/shtml/zggsb/20250708/128559.html